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宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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じゃずぎたりすと物語 39 〈なんだかんだで 出発!!〉

じゃずぎたりすと物語 39 〈なんだかんだで 出発!!〉

ご存知の通り、普段は物静かだが、怒れば灰皿が飛んでくる怖い父です。
※第5話〈魔の練習:中学校時代〉をご覧ください。

「担任の先生がな、おまえはこのままだと落第するって言っているぞ!」

ひぇ~~っ!!

父はよほどの事がない限り、私に直接近づいて説教するような人ではありませんでしたが
このシチュエーションは高校入試の時以来2度目です。
おそらく「よほど」の事だったのでしょう。

「明日から夏休みだけど、先生がおまえの事で学校まで出向いてくれるそうだ。」
私が「でも明日から自転車旅行があるし・・・」と言うと、
「やかましい!!」

幸いな事に父のそばに灰皿は置いていませんでしたが、いつ殴られるかドキドキでした。

翌日父は仕事のため、母が同行して担任の待つ学校へ出向きました。

休みに入った誰もいない学校。
職員室のドアを開けると担任が一人、書類を片手に私を待っていました。

いくらか予想はしていました。
テストの点は芳しくありませんでしたし、来る日も来る日もギターに明け暮れて、
寝坊のため欠席したことも多かったことは事実でした。

呼び出された内容は、残念ながら予想を裏切りませんでした。
入学時にはトップクラスの成績で入ったにもかかわらず、
現在では後ろから数えたほうが早い成績にまで落ち込んでいる事に加えて、
授業の3分の1近く欠席しているということでした。

母が「親の立場からもよく見守って注意するようにします」
「これから頑張るわよね」

「あ、ああ。」
そう答えたものの、窓の外でけたたましく鳴く蝉の声で昨年の自転車旅行の想いが蘇り、
心はすでにここにはなく、1日遅れてしまった出発のことで頭の中は一杯でした。


旅行の荷物の準備と点検を済ませて、4時40分に目覚ましをかけて寝ました。

朝起きると、夜中に仕事を終えて帰った父が、私の自転車レッド号に油を差したり
緩んだネジを締め直したり、ギアの点検など、一生懸命に行なっていました。
きっと父は寝ずに作業を行なってくれていたのでしょう。
昨日担任に呼ばれた内容のことなど、一切問いただしませんでした。

「気を付けるんだぞ」
わたしはこんな父が実は大好きでした。


1970年7月22日水曜日午前5時30分 自転車日本一周旅行後半・北日本編
今日の目的地、茨城県・土浦に向けて、いざ出発!! 

                                         つづく

※後のストーリーで明らかになりますが、実は持参した大切なカメラを北海道で紛失したため、
実際の写真に収める事が出来ませんでした。
しかしながら、途中で知り合った心優しいサイクリング仲間がカメラを貸してくださり、
貴重な後半部分は写真記録が残っています。
さらに、就寝前に欠かさず書いた日記が赤裸々なまでに日々を綴っています。
南日本編にはない、日記を中心としたリアルな旅行記をお楽しみにしてください。
じゃずぎたりすと物語 39 〈なんだかんだで 出発!!〉_e0095891_1632465.jpg

by ymweb | 2009-01-28 16:03 | じゃずぎたりすと物語