12 〈高校生活スタート〉
2007年 05月 08日
ひときわ大きな声で担任が 「へ~~!!」
その後顔を近づけて、私だけに聴こえるような小声で
「お前今までどんだけサボってたんだ?」
意味不明のまま席に戻りますが、
何人かの視線はずっと私の後を追っています。
手にした通知表をみんなから見られないように
恐々そっと開けてみました。
心の動揺を顔に出さないことがどれほど難しいのでしょう。
両唇は斜め20度に吊り上ってしまいましたが、ほっぺたはそのまま。
目はそのやり場に困り、通知表と机、そして前の席の生徒の背中とを行ったり来たり。
全て、そう、全ての教科が上がっていました。
音楽にいたっては、1学期は3だったのに、4を飛び越して5になっていました。
後に西村先生曰く、「5を付けない理由が見当たらなかった」そうです。
なんだか西村先生が好きになりそうでした。
※ずっと後になってから判明しましたが、
この西村先生のご子息が、渋谷にあるジャズギター専門店
〈ウォーキン〉のオーナー、西村さんです。
内申書提出の懸かった2学期の成績の目標も見事にクリア。
担任の先生から「この成績だったら入学試験は、仮に低い点数でも楽勝だろう」
というお墨付きをもらってさらに気を良くし、年が明けて入試の直前まで、
またギターに明け暮れる日が続きました。
押入れ特訓での良い成績が功を奏して、都立高校入試テストも合格して
希望する高校に入ることが出来ました。

高校に入ってみると、ギターを演奏するという生徒も多く、
また、さまざまな音楽情報も溢れていました。
とりわけ海外ポップスのヒットランキングを紹介する番組や、
人気バンドの「ザ・モンキーズ」という番組もテレビで放送され、
音楽好きな生徒の間では、もっぱらその話題が会話の中心になっていました。
私はというと、そのような話題に入ってみんなの仲間になりたいという気持ちは少しあったものの、
ボーカルが中心でギターが前に出てこない音楽に全く興味が沸きませんでした。
しかも英語の歌詞はチンプンカンプンです。
押入れ生活が長く続き、「引きこもり」の性格を背負ったままだからでしょうか、
すっかり孤立して、相変わらず寺内タケシやベンチャーズを聴いてはそれをコピーしました。
興味のあるのはギターのテクニックのことだけでした。
何しろ上手くなりたかったのです。
自分の演奏している音楽のことや、練習して入る曲のことをクラスの生徒に話すと、
たいていは馬鹿にされてしまいました。
しかし、買い集めた寺内タケシやベンチャーズのレコードも、
聴いては一晩で全てコピーして弾けてしまい、
これもまたそろそろ興味が失せてきました。
そんなある日、まだ聴いたことのないベンチャーズのレコードを
手に入れました。
そのタイトルには〈キャラバン〉と書いてあります。
これも一晩でコピーして、自分の新しいレパートリーに加えようと思いました。

そしてレコードに針を落とした瞬間、
エスニックなメロディと、聴き慣れないリズムに注意深く耳を傾けました。
ふ~~ん。。。 これも簡単そうだな。
ところがです。
トッチー♪♪ト・シャバダバシャバダバサバダバサバダッチー♪
ん?? 何じゃこれは??
「サビ」のほんの4小節足らずのところです。
かつて聴いたことのない不思議な音階が出てきました。
早速この部分のコピーに挑戦しました。
ひ、弾けない!!
そう、今までの練習で培ってきた私のテクニックとフレーズには
この音階や指くせはないので弾くことができません。
しかも、どうしてこのコードの時にこんな音階が出てくるのか、
全く理解することが出来ません。
何とも不思議なソロですが、気持ち良いような悪いような。
いいえ、とても気持ち良いのです。
何とかコピーして同じように弾けるようになったものの、
これは一体どういう音楽なのだろう、何故こんな音が使えるのだろうか。。。
モヤモヤした気持ちが抑えられずにいました。
そんなある日のこと。
近所に住む一学年下の阿部君が、かなりギターが上手で、
しかも音楽情報に長けているということを聞きつけました。
実は彼の顔は知っていました。
また当然彼も私を知っているはずでした。
しかし相当なギター上手で情報家と知れば、そんな彼にちゃんと会って、
ギターのことや音楽のことをいろいろ話したいと機会をうかがっていました。
その機会は、思いも寄らぬ形で突然やって来ました。
学校から帰って早速ギターを弾こうと思っていたところ。
ピンポ~ン!
家のチャイムが鳴りドアを開けると、そこに立っていたのは
何と紛れもなく阿部君でした。
「宮之上さん!!」
驚いたのは、来てくれた嬉しさよりも、その異常な状況でした。
玄関先に立っている初めてちゃんと会った阿部君の顔は、
顔面は腫れ上がり、口からいくらか出血していて涙も流しています。
「阿部君!? だよね!? どうした??」
その後顔を近づけて、私だけに聴こえるような小声で
「お前今までどんだけサボってたんだ?」
意味不明のまま席に戻りますが、
何人かの視線はずっと私の後を追っています。
手にした通知表をみんなから見られないように
恐々そっと開けてみました。
心の動揺を顔に出さないことがどれほど難しいのでしょう。
両唇は斜め20度に吊り上ってしまいましたが、ほっぺたはそのまま。
目はそのやり場に困り、通知表と机、そして前の席の生徒の背中とを行ったり来たり。
全て、そう、全ての教科が上がっていました。
音楽にいたっては、1学期は3だったのに、4を飛び越して5になっていました。
後に西村先生曰く、「5を付けない理由が見当たらなかった」そうです。
なんだか西村先生が好きになりそうでした。
※ずっと後になってから判明しましたが、
この西村先生のご子息が、渋谷にあるジャズギター専門店
〈ウォーキン〉のオーナー、西村さんです。
内申書提出の懸かった2学期の成績の目標も見事にクリア。
担任の先生から「この成績だったら入学試験は、仮に低い点数でも楽勝だろう」
というお墨付きをもらってさらに気を良くし、年が明けて入試の直前まで、
またギターに明け暮れる日が続きました。
押入れ特訓での良い成績が功を奏して、都立高校入試テストも合格して
希望する高校に入ることが出来ました。

高校に入ってみると、ギターを演奏するという生徒も多く、
また、さまざまな音楽情報も溢れていました。
とりわけ海外ポップスのヒットランキングを紹介する番組や、
人気バンドの「ザ・モンキーズ」という番組もテレビで放送され、
音楽好きな生徒の間では、もっぱらその話題が会話の中心になっていました。
私はというと、そのような話題に入ってみんなの仲間になりたいという気持ちは少しあったものの、
ボーカルが中心でギターが前に出てこない音楽に全く興味が沸きませんでした。
しかも英語の歌詞はチンプンカンプンです。
押入れ生活が長く続き、「引きこもり」の性格を背負ったままだからでしょうか、
すっかり孤立して、相変わらず寺内タケシやベンチャーズを聴いてはそれをコピーしました。
興味のあるのはギターのテクニックのことだけでした。
何しろ上手くなりたかったのです。
自分の演奏している音楽のことや、練習して入る曲のことをクラスの生徒に話すと、
たいていは馬鹿にされてしまいました。
しかし、買い集めた寺内タケシやベンチャーズのレコードも、
聴いては一晩で全てコピーして弾けてしまい、
これもまたそろそろ興味が失せてきました。
そんなある日、まだ聴いたことのないベンチャーズのレコードを
手に入れました。
そのタイトルには〈キャラバン〉と書いてあります。
これも一晩でコピーして、自分の新しいレパートリーに加えようと思いました。

そしてレコードに針を落とした瞬間、
エスニックなメロディと、聴き慣れないリズムに注意深く耳を傾けました。
ふ~~ん。。。 これも簡単そうだな。
ところがです。
トッチー♪♪ト・シャバダバシャバダバサバダバサバダッチー♪
ん?? 何じゃこれは??
「サビ」のほんの4小節足らずのところです。
かつて聴いたことのない不思議な音階が出てきました。
早速この部分のコピーに挑戦しました。
ひ、弾けない!!
そう、今までの練習で培ってきた私のテクニックとフレーズには
この音階や指くせはないので弾くことができません。
しかも、どうしてこのコードの時にこんな音階が出てくるのか、
全く理解することが出来ません。
何とも不思議なソロですが、気持ち良いような悪いような。
いいえ、とても気持ち良いのです。
何とかコピーして同じように弾けるようになったものの、
これは一体どういう音楽なのだろう、何故こんな音が使えるのだろうか。。。
モヤモヤした気持ちが抑えられずにいました。
そんなある日のこと。
近所に住む一学年下の阿部君が、かなりギターが上手で、
しかも音楽情報に長けているということを聞きつけました。
実は彼の顔は知っていました。
また当然彼も私を知っているはずでした。
しかし相当なギター上手で情報家と知れば、そんな彼にちゃんと会って、
ギターのことや音楽のことをいろいろ話したいと機会をうかがっていました。
その機会は、思いも寄らぬ形で突然やって来ました。
学校から帰って早速ギターを弾こうと思っていたところ。
ピンポ~ン!
家のチャイムが鳴りドアを開けると、そこに立っていたのは
何と紛れもなく阿部君でした。
「宮之上さん!!」
驚いたのは、来てくれた嬉しさよりも、その異常な状況でした。
玄関先に立っている初めてちゃんと会った阿部君の顔は、
顔面は腫れ上がり、口からいくらか出血していて涙も流しています。
「阿部君!? だよね!? どうした??」
by ymweb
| 2007-05-08 19:09
| じゃずぎたりすと物語