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宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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じゃずぎたりすと物語 Inside Story

【じゃずぎたりすと物語

久しぶりの再開はInside Story


長いことジャズミュージシャンやっているといろいろな出会いとエピソードがあるもんです。

お楽しみください。


▪️フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)の思い出。

24歳の宮之上、演奏以外はタバコや酒はもちろん、パチンコ、競馬、麻雀と、ギャンブルに明け暮れていました。

気が強くて自信家、今では考えられない?生活を送っていました。(*ω´)


10時、キングレコードのプロデューサーから電話があった時は、徹夜麻雀の疲れでまだ寝ていました。

「どうしたんだ!フィリーが待っているぞ!」

10時に品川プリンスホテルでレコーディングの打ち合わせがあったのだ。


「ヤバイ!!」


慌てて支度して家を出るも、国分寺から品川まで1時間以上かかる。

こうして、24歳の若造はフィリーと関係者を1時間半待たせました。

この時フィリーは、ビル・エバンス(pf)のドラマーとして来日していました。


わたしのメジャーデビューとなる「Song for Wes」のレコーディングです。

当日は、スタジオにビル・エバンスが見学に来るということ楽しみにしていましたが、「あれ」のせいで?ホテルで倒れていたらしく、来ませんでした。

来たのはベースのマーク・ジョンソンです。


フィリーはドラムセットの傍にブランデーを2本置いて、飲みながら叩いています。

全身バネのような、フワフワした体から繰り出されるリズムは、しなやかでいてスピードがありました。

じゃずぎたりすと物語 Inside Story_e0095891_11124277.jpeg

レコーディングが進んでいくと、フィリーの飲むブランデーの量も増えて、窓越しのプロデューサーたちには、そのドラミングが酔っているように聴こえたみたいで、「宮之上君、フィリーに飲まないように言ってくれ」と頼まれた。

(当時はわたしが関係者の中では英語がましだったw


しかし、天下のしかも父と同い年くらいのフィリーに「酒飲むな」なんて言えるはずもないし、なんで俺が言う?


良い方法を思いついた。d( ̄ ̄)

俺が飲めば良いのだ。(^ ^)

フィリーに「飲んでいい?」って聞いて、2本のブランデーのもう一つをボトルから直接ゴクゴク飲んだ。

おっ!いつものペースになってきたぞ。


かくして、レコーディングも順調に進んで来たころ、わたしも良い気持ちになり、アップテンポの曲に対してフィリーに「Hey Philly,don't be fast!」(走るな)と言ってしまった。

これを聴いたわたしの弟子が関係者に「うわ〜〜宮さんあんな事言ってるよ、マイルスだって言わないよ〜」


実際、フィリーのドラミングは信じられないほどスピードがあって、ややもすると走って聴こえるのだ。

しかし、プレイバックを聞き返すと、走っていたのは、わたしを含めて他のミュージシャンで、フィリーのドラミングは完璧でした。_||○


曲のエンディングもフィリー自ら提案してくれたりと、

そんなこんなで、何とかレコーディングを完了して、宮之上24歳の初メジャーデビュー作品が完成しました。

じゃずぎたりすと物語 Inside Story_e0095891_11180469.jpeg

残念なことにフィリーはその何年か後に亡くなってしまったけど、もう一度演奏したかった。


4月1日に発売される新作CDTHE MASTERS

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by ymweb | 2021-03-02 11:14 | じゃずぎたりすと物語