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宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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じゃずぎたりすと物語59話「霧の摩周湖は‘魔’周湖」

「じゃずぎたりすと物語」は、私がギターを始めるきっかけから
プロのジャズギタリストになるまでの出来事を、
おおよそ史実に基づいて書いてます。
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途中から人生においての大きな思い出となった
「自転車日本一周旅行記」に変わりかけちゃっていますが(ーー;)
私にとって15歳~16歳にかけての自転車日本一周旅行は、
体力作りはもとより、
根性や気力といった精神態度の原点ともなっています。
まもなく旅行記は終了して、
またジャズギタリストへの道を綴りたいと思いますが、
自転車旅行記もまだまだ皆さんにお聞かせしたい
ハラハラ、ドキドキ、ワクワクの出来事がたくさんあります。
完走するまで引き続き読んでくだされば嬉しく思います。
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※初めて読まれる方は是非とも第一話からお読みください。
http://ymweb.exblog.jp/i4/6/

※記載してある自転車旅行記の情報は、
詳細に書き記された当時の日記からのものです。


【じゃずぎたりすと物語】 59話「霧の摩周湖は‘魔’周湖」

1969年8月11日(火)

朝6時30分に目覚めると、
昨日知り合ったサイクリストは境内にいて、
寺のおばあさんと話をしていました。

今日のルートは、ここ美幌から屈斜路湖を経て、
憧れの摩周湖を経由して弟子屈(てしかが)に向かいます。

美幌峠までの道はところどころ非舗装でとても走りにくい。
荷物の多さも関係しているようだけど、
彼は私をおいてどんどん先に進んで行きました。
彼に着いて行くことは諦めて自分のペースで走っていると、
途中で道路工事の旗振りのおばちゃんが、
「お友達が美幌峠で待っているそうよ」
聞くと峠はもうすぐだそうだ。
嬉しくなった。
自転車は砂利道の上り坂はきついのです。

やっと到着した美幌峠で彼が待っていてくれました。

じゃずぎたりすと物語59話「霧の摩周湖は‘魔’周湖」_e0095891_16104538.jpg


峠には休憩所が一軒あり、入ってみるとジャズがかかっていました。
ジャズ、じゃず、JAZZ、ジャズ、じゃず、JAZZ、ジャズ、じゃず、JAZZ
久しぶりに聴いたような気がします。
じゃずぎたりすと物語59話「霧の摩周湖は‘魔’周湖」_e0095891_16153739.jpg


火照った顔と体をすーっと冷ましてくれるような心地良い音楽。
早く東京に帰って演奏したい。
ま、この自転車旅行が無事に終わらなければ無理なのですが。

この休憩所でジャガイモの天ぷらを買って食べました。
少し上ると屈斜路湖を望む気色の良いところがあり、
アイヌ人が正装していて観光客の写真ラッシュです。

美幌峠を後に、長い砂利の下り坂を何度もすっ転びそうになって、
ようやく舗装道になると、屈斜路湖に小さく突き出た和琴半島です。
商店に入って食パンとソーセージ、そしてファンタを頼んで昼食。
この先に無料野天風呂があるというので行ってみました。
和琴半島の露天風呂は私たち二人のほかは誰もいませんでした。
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16歳の宮之上少年、他人に裸を見せる勇気がなく、
体のほこりを落とし、軽く洗髪をしただけでした。

「青春の半分を旅に!」
露天風呂の柱に生まれて初めて落書きしちゃいました。(^^;

風呂から上がった彼は「ここで別れよう」と言いました。
もちろんツアーの行程も目的地も違うので仕方のないことなのですが、
わたしがカメラをなくしたので、
彼に記念となる写真をもっと撮ってほしかったのです。
※住所を教えましたが、その後彼から写真は送られてきませんでした。

また独りになった私は屈斜路湖畔に沿って走り出しました。
キャンプ場として賑わっている砂湯というところがあり立ち寄ってみると、
湖畔のどこを掘っても温かい温泉が湧き出ている面白いところでした。
じゃずぎたりすと物語59話「霧の摩周湖は‘魔’周湖」_e0095891_1618748.jpg


湖とさよならして、しばらく走るとホテルが立ち並ぶ川湯温泉に着きました。
テントやお寺ではなく、たまにはこんな綺麗なホテルに泊まりたいなと思いました。
とはいえ、川湯温泉は今回の旅で楽しみにしていた摩周湖の入り口でもあるのです。
地図によると摩周湖の第三展望台までは13,5km。
道が蛇のようにぐにゃっと書いてあるけど大したことなさそう。
と思ったけど、実はこれは浅はかな考えで、大変なことになります。

【豆知識1】
摩周湖はカルデラ湖なので、山を登ったところにあります。
この付近上空はオホーツク海と太平洋からの気流がぶつかるので
天候が変わりやすく雨や霧が発生しやすい。

川湯温泉を出発してほどなく、道は非舗装の砂利道になりました。
砂利道の上り坂では自転車のペダルを踏んで進むことが出来ず、
仕方なく降りて愛車レッド号を押しながら進みました。
肌寒くなり、天気も悪くなってきました。
「痛い!!」
始末の悪いことに
ブ~ンブ~ンとアブ(虻)が飛んできては私の顔や首筋、腕にとまります。

【豆知識2】
北海道には虻が多く生息していて、虻田郡とか、
白老(アイヌ語で虻が多いところの意味)など、
虻に由来した地名が多くあります。

私はポンチョを出して着込んで自転車を押し、
顔や指にとまる虻を追い払いながら進みました。
しばらく進んだのですが、展望台まではまだ8kmくらいあるでしょうか。
いつになったら到着するのでしょうか。

次のカーブを過ぎれば展望台があるかな? 無い。
その次のカーブを過ぎれば展望台があるかな? 無い。
そのまた次のカーブを過ぎれば展望台があるかな? 無い。

行き交う人や車はほとんどいません、一人ぼっちです。
雨が酷くなってきました。

寂しい。。。。
家に帰りたい。(。´Д⊂)うぅ・・・。
16歳の宮之上少年の目には涙が溢れていました。

そんな時です。
向こうからサイクリストがやって来ました!

「展望台まであとどのくらいですか??」
「あと3、4kmだよ!」

しかし連続する急坂を自転車押しての3、4kmなので
まだまだかかりそうです。

次のカーブを過ぎれば展望台があるかな? 無い。
その次のカーブを過ぎれば展望台があるかな? 無い。
そのまた次のカーブを過ぎれば展望台があるかな? 無い。

(。´Д⊂)うぅ・・・。

道が突然舗装になりました。

次のカーブを過ぎれば展望台があるかな?

見えました!!!
「摩周湖第三展望台」と書いてあります。

ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

湖は??

ん?? ジーッ (@ ̄_ ̄) ・・・・・
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摩周湖の湖面らしき下方から霧が舞い上がってきて何も見えません。

ふざけるな!!
バカヤロー!!ε=(。・`ω´・。)

この天気なので第二、第一展望台からの眺めも諦めて、
今夜の目的地、弟子屈(てしかが)に向かうことにしました。

自転車旅行の醍醐味は何といっても下り坂にあります。
展望台から弟子屈までのおよそ6、7kmはずっと下り坂。
霧の中、車の速度だと危険ですが自転車の速度には問題ない視界。
ペダルを踏まずにかっこよく爽快に走り抜けました。

日記には「ほんとにほんとにほんとにほんとに、かっこよく気持ちよかった」と綴られています。
じゃずぎたりすと物語59話「霧の摩周湖は‘魔’周湖」_e0095891_16222121.jpg

過酷な上り坂の苦しさゆえに下り坂の爽快さがひとしおだったのでしょう。

しかし弟子屈の街に到着した時に、
下り坂で酷使した後ろのブレーキが故障してしまいました。

今夜の宿探しに数軒のお寺をあたったけど、
最後のお寺に「お寺を旅館と勘違いするな!」と怒られました。(´・ω・`)ショボーン
仕方なく駅前にある簡易宿泊所に泊まることにしました。

今日見ることの出来なかった摩周湖にもう一度行くぞ! 
という目論見をしながら9時30分就寝 zzz

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【この日使ったお金】

ジャガイモの天ぷら¥50 
食パン¥55 
ソーセージ¥30
ファンタ¥30
パン¥110
カレー南蛮¥140
宿泊料¥500

合計¥910
by ymweb | 2013-02-25 16:35 | じゃずぎたりすと物語