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宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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56話「オホーツクの風がほおをつく?」

これまであらすじ

「じゃずぎたりすと物語」は、私がギターを始めるきっかけから
プロのジャズギタリストになるまでの出来事を、
おおよそ史実に基づいて書いてます。。

途中から人生においての大きな思い出となった
「自転車日本一周旅行記」に変わりかけちゃっていますが、
私にとって15歳~16歳にかけての自転車日本一周旅行は、
体力作りはもとより、根性や気力といった精神態度の原点ともなっています。
まもなく旅行記は終了して、
またジャズギタリストへの道を綴りたいと思いますが、
まだまだ皆さんにお聞かせしたいハラハラ、ドキドキ、
ワクワクの出来事がたくさんあります。
完走するまで引き続き読んでくだされば嬉しく思います。

※初めて読まれる方は是非とも第一話からお読みください。
※記載してある情報は詳細に書き記された当時の日記からのものです。

56話「オホーツクの風がほおをつく?」

1969年8月8日(土)

「おい、どうした!?」
ギギーーッと急ブレーキの音を立てて
斜めに止まったトラックから声がかかりました。
私のほうが少し驚きました。

思い出をたくさん記録したカメラをなくして気を落とし、
フラフラと蛇行運転している私を心配したのでしょう。
「乗っていくか?」と声をかけてくれました。
ペダルを踏む体力も気力もなくなった私にとってまさに救いの船、
二つ返事でお願いすることにしました。

建築関係の仕事をされているらしい二人は割と無口、
運転手は芦屋小雁似で、もう一人は高校の数学の先生に似ていました。
こうして愛車レッドを荷台に乗せてオホーツク海を南下し、
車に揺られてうとうとしていると、雄武(おうむ)の町に到着しました。
そこは彼らが共同生活をしているらしい建築現場の仮設住宅でした。
インスタントラーメンに缶詰とコロッケをご馳走してくれました。
ここで寝かせてくれるのかと思いきや途中休憩だったらしく、
さらに先の紋別まで走ることになりました。
到着した紋別の事務所で布団を敷いてくれてそこで寝ました。

思いがけず距離を稼げたおかげで、
今日は紋別に留まることにしました。
オホーツク海のど真ん中に位置する紋別は、
冬は流氷の街として有名な港町です。
56話「オホーツクの風がほおをつく?」_e0095891_16513757.jpg

今夜もこの街に泊まろうと思いますが、
昨夜お世話になった事務所の人たちはすでに仕事に出ているし、
連泊はさすがに気が引けるので、
テントを貼れる場所または神社かお寺を探すことにしました。
港の見える高台の公園にたどり着くと、
ポカポカの日差しの中で漁師らしいおじさんが網を修理していました。

いかにも自転車旅行をしている格好の私に向かって、
「まんま食え、まんま、北海道の三平を食わしてやる」
私の腹ペコがどうして分かっちゃったのしょうか(ーー;)
公園の隣にある家にお邪魔していただくことにしました。

三平とは三平汁のことで、
鮭や鱈などの魚と根菜を塩だけで煮た鍋でした。
56話「オホーツクの風がほおをつく?」_e0095891_16521041.jpg

蛸と葱の酢味噌和えもいただいて、
心もお腹もすっかりいっぱいになったところに小学生の娘さん二人が帰宅。
このお嬢様方はとってもべっぴんさんでした。
お友達三人と一緒に港に魚が上がるのを見に行きました。
今夜はこの浜野家に泊めていただくことになり、
おかげで夕食ではカジカの味噌汁や蟹子などなど、
オホーツクの海の幸を堪能することが出来ました。

しかしこうした幸せな時間はそう長くは続きません。

       次号「愛車レッド号の骨折!」につづく
by ymweb | 2013-01-01 16:53 | じゃずぎたりすと物語