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宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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じゃずぎたりすと物語 50話 〈長万部~雷電海岸〉

じゃずぎたりすと物語 50話

執筆の続行までおよそ1年のブランクが空いていまいましたので、
これまでの大まかなあらすじと流れをお伝えして本文に入りたいと思います。


この物語は私、宮之上貴昭がジャズギタリストになるまでの軌跡を綴ったもので、
小学校5年生(10歳)の時に兄からもらってギターに初めてギターに触れ、
ひょんなことから高校1年生(15歳)の時にジャズの音楽と出会い、
高校1年と2年の夏休みに無謀にも日本一周一人旅の自転車旅行を計画。
何を思ったのか、ジャズに大切な?「精神と肉体を鍛える」という目標であった。

高校の夏休みは40日しかないので、
いっぺんに自転車で日本を一周することは物理的に不可能なため、
高校1年の夏休みは東京から南日本を一周して、
翌年の高校2年の夏休みに北の部分を一周するというもの。

今回からの執筆はその自転車旅行記の後半部分で、
北海道に無事上陸した宮之上少年(16)は長万部のお寺に泊まって、
一路日本海側を目指すという部分から始まります。

「なぜ宿泊場所や人の名前、使ったお金などのことを詳細に記憶しているのか?」
このことをファンの皆さんから多くの質問をお寄せいただくのですが、
毎日忘れずに付けた「自転車旅行記」とその時の写真を基にしています。

このところジャズギターのことより自転車旅行記の方が重きを置いちゃっていますが、

また本題に戻りますし、これから起こる自転車旅行記のハラハラドキドキも体験談も
是非皆さまにお伝えしたいと思っています。

初めてお読みになる方はどうぞ第一話からお読みください。
http://ymweb.exblog.jp/m2007-03-01/

画面をスクロールして第一話からご覧いただけますし、
続き部分は左の「以前の記事」で順番にご覧いただけます。


それでは自転車日本一周旅行中の16歳の宮之上少年、お楽しみください。
ご感想などお聞かせくだされば嬉しく思います。


【50話 長万部~雷電海岸】1969年8月2日(土)

6時にセットした目覚ましは実際に鳴ったのだけど、
どうにもこうにも起きるのがかったるい。
東京を出発して11日目。
疲れが溜まってきているに違いありません。

しかしやけに子供の声が外からうるさく響くのでまた布団に潜り込むと、
住職が部屋にやってきて「おはようございます」

しかたなく起き上がって荷物をまとめて出発の準備。
住職にお礼の挨拶をと思って探したら、寺の境内ではラジオ体操をやっていて、
住職はワイヤレスマイクを手に持って指揮官になっていました。
本堂では若い女性が4人ほど正座して何かムニャムニャ唱えています。

昨夜一緒だった650ccバイクの兄さんに挨拶して一足先に出発することにしました。

彼も同じ方向なので後から私を追い抜くはずです。

私の勘は的中したようです。
後方から重低音のカッコイイ音を立てて650ccの兄ちゃんがやって来て
「気をつけて!」と言って去っていきました。

私には自力による旅こそ最高で、エンジンで走るのは卑怯だ!
みたいな偏屈なプライドがあって、バイクを忌み嫌っていたのだが、
昨日から接している彼の温和な人柄がそうさせたのか、
(バイク旅行?それはそれでいいではないか)という気持になりました、たぶん。

朝ごはんを食べていません。
早速商店を探してパンにありつこうと思いました。
蕨岱(わらびだい)というところまで来るとようやく店がありました。
中に入るとウィンドウにパンの姿がありません。
時間が早いのでパンはまだ届いていないそうです。((((_ ▲_|||))))ドヨーン

しかたなくまた走り出すとしばらくして豊幌という集落。
ありました~店が。
大き目のパン1個とコーヒー牛乳を買ってお腹を満たしました。
いや~豊幌はいいところだ~~(笑)

さすがに北海道は広い。
一つの集落から次の集落まで行き交う車を1台も見かけないこともあります。

日差しは強いのだけど風はひんやりとしています。
よいっしょ、よいっしょ。
北海道の「くびれ」の部分、太平洋(噴火湾)から日本海に抜ける道を今走っています。

たいして高い山はないのだけど、ちょっとの上り下りでも自転車は敏感に体に反応してきます。
ペダルを漕ぐ足一つ一つに力が入ります。

ほんの少年に過ぎない私はすぐお腹が空きます。
蘭越という集落の手前で「アイスクリーム」と書かれてある幟(のぼり)を発見!
きっとパンも売っているだろうと思い、近づいてみました。

店には誰もいませんでしたし、食品らしきものもありませんでした。
私を発見した「ほっかぶり」のおばさんが裏の田んぼからこちらにやってきました。

「パンは置いていないんだよ、もしよければご飯食べていく?」

まあ何と優しいお方なのでしょう。
もちろん遠慮なくいただくことにしました。(^^;

真夏だというのにひんやりと寒いのでストーブにあたって待っていました。

「何も無いけど。。。。」

出てきたのは目玉焼きと鯨のベーコンが4枚。
優しい気遣いと3杯のどんぶり飯でお腹も心も満腹になりました。


地図によると、ここから一気に日本海に抜ける舗装道、のはず。
しかし地図の情報は間違っていて、非舗装の砂利道。
雨が降り出し風も強くなってきて道路は泥という最悪な状況。
行き交う人も車もなく、とても寂しい16歳の宮之上少年です。

それでも「進め青春!」や「男一匹ガキ大将」の歌を歌って、
雨の中、一生懸命ペダル漕ぎました。
こんな時口ずさむのはジャズではありません。(^^;

そうこうしているうちに愛車レッド号は荒波舞う大荒れの日本海に出ました。
じゃずぎたりすと物語 50話 〈長万部~雷電海岸〉_e0095891_0425841.jpg


雨がさらい強くなりました。
店に入って30円のパンを注文してポンチョに着替えていると
お店の人が親切にお茶を出してくれました。

本来ならもう少し先まで走行距離を伸ばしたいところですが、
悪天候のためテントを張ることも出来そうにありませんので、
今宵の宿泊はこの雷電海岸にしたいと思います。
まあ予算が合えばですが。

少し進んだところに雷電温泉と書かれた宿があったので宿泊料を訊ねると、
ご主人は私の風体をしばらく見つめてから、「素泊まりなら350円でいいよ」

しめた!!

二人の若くてチャーミングな娘さんがいて話も弾んだし、
おばあさんからは焼きとうもろこしもご馳走になってすっかり気を良くして、
いつもより少し遅い10時半頃に床に就きました。

とはいえ外は大荒れの天気で、明日が心配です。
しかし明日はそんなことよりさらに大変な恐怖が待っています。

次号「札幌で凍死!?」 乞うご期待!
by ymweb | 2011-01-03 00:43 | じゃずぎたりすと物語