宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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じゃずぎたりすと物語 43 「あ~あ 松島や」
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目が覚めるといい匂いが立ちこめていました。
予算の関係上、この民宿には朝食を頼んでいませんでした。

荷物をまとめて玄関に向かうと、宿のおばさんが 
「よかったら朝ごはん食べてください」
すっかりご馳走になった上に、お弁当のおにぎりまで作ってくれました。
さらにさらに、宿泊料金は800円のはずでしたが500円でいいとのこと。
私は素晴らしい海の景色に加えて人情の厚さで、
この松川浦がすっかり気に入ってしまいました。
しかし自転車旅行に長居は出来ません。
智子さんという娘さんに私のカメラで記念の写真を撮ってもらい、
しばらくここに滞在したいという気持ちを抑えて6時45分に出発。

※その後数十年を経て、北村英治クインテットのコンサートで相馬市文化会館を訪れた際、
その民宿を探し当てて挨拶に行きました。
民宿だった家に着き、チャイムを鳴らして出てきたのは、すっかり年老いたお母さんでした。
「そんなこともあったかもしれない。。。」と記憶も虚ろでしたが、
「その節は大変お世話になりました」とお礼を述べることが出来て、
わたしの気持ちは少し晴れやかになりました。
残念なことに松川浦は大きな貿易港が建設されていて、当時と形相を異にしていました。
夢にまで見た あののどかな松川浦の景色はもうありませんでした。


さて今日も良い天気。
炎天下の国道6号をひたすら北上し、いよいよ宮城県に入りました。
亘理町の2キロほど手前に「氷」の看板を発見。
その小さな店に入ると、なんと氷いちごが20円と書かれてあります。
早速注文すると、おじいさんが重い氷をセットして、必死に手で回して削っています。
なんだか可哀そうに思えてしまいました。

亘理町に入ると、街中魚くさい臭いで充満していました。
魚介類を加工する臭いなのでしょうか。。。
海の匂いのような清清しい匂いではなく、吐き気をもよおす臭さです。

仙台市街を避けて、名取から国道45号線に出る海岸沿いの道は、
平坦でしたが陽を遮る並木などがないため、かなりしんどかった。
途中、やっと見つけた商店でパンを1個を食べてコーラを飲みました。

また辺りに魚くさい臭いが充満してくると塩釜の街に到着です。
地図を見ようとして国道から路地に入ると、うまい具合に小さな食堂がありました。
食事そのものは注文せずに、かき氷のレモンとコーラを注文して、
民宿で持たせてくれたシャケとおにぎりと食べました。

おなかも一杯になったところで、
楽しみにしていた日本三景の一つ、「松島」に向かいます。

眠い目を擦りながらようやく到着した松島。

ゲゲッ!!!

土曜日ということもあってか、混雑していて駐車場も満車。
観光バスから団体で観光客が降りて来ます。
観光船の発着する港には大小さまざまなゴミが浮かんでいます。
実際にタバコの吸殻を平気で海に捨てている人もいました。
土産物屋はこぞって客引きの甲高い声を上げています。
自然の美しさも、人間の心の汚さには勝てなかった、と感じました。

そんな中、ある男性が近づいてきました。
「へえ、日本一周か。。。」

3年前に大学を卒業したそうで、以前に北海道を自転車で一周した経験があるそうです。
「氷でも食べる?」と言って店に入り、かき氷をご馳走してくれましたが、
観光地ということなのか、値段の割りに量が少なくて、少ししらけました。
「もう一杯どお?」と言ってくれましたが、「いや、いいです」と断ると、
あっさり「あっ、そう。」と言っておしまいでした。
彼を引き立てようと 「名前を教えていただけますか?」と言うと、
「旅の記念として心にとっておくだけでいいよ、じゃね!」とカッコつけて去って行きました。

うわっ、かき氷で。。。

想像していた「松島」とはえらくイメージが違ってくらくらしたのか、
炎天下を走ったためにくらくらしたのかは定かではありませんが、
気分がすぐれないので、どこか近くに宿を取ろうと決めました。

松島ユースホステル
松島の半島、大高森という場所に向かいました。

「予約していないんですか!?」

そんなもの長距離の自転車旅行では不可能です。
もし予約したとしても、体調を崩した、台風が来た、自転車が壊れた、
こんな状況が起きたら全てキャンセルしなければなりませんし、
実際のところ明日が、今日がどうなるかも定かではないのがこの旅行です。

話は変わりますが。。。
駐車場や役所にお勤めの方にありがちな場合ですが、
広い駐車場で、他に車が停まっていないから、
どの方向から停めたとしてもいいと思うのだけど、
「こらこら、こっちから回って!」と、自分の法律を作っちゃうおじさんがいます。
以前、ハワイのアロハタワーでエレベーターのボタンを押して屋上に出ようとしたところ、
「No!! It’s my job! Don’t touch!」 と急に出てきたおじさんに言われて驚いたこともあります。

そう、彼らは自分の仕事に自信を持っていて、独自の法律を作って、
それを人にも守らせようと必死です。

話は戻ります。
ユースホステルの受付女性は「今度から予約しなきゃダメ!」とぬかします。
16歳の宮之上少年は意気盛んな年ごろ。
「だから、それが出来ないのでこうしてここに来ているんです」

聞きたいのは、今夜泊まれるか否か、なわけです。
それを回りくどく、恩着せがましく「では泊めてあげましょう」的な発言に切れそうになりました。
陽も暮れてきましたし、他のスタッフは優しそうでしたから、
仕方なくこのユースホステルに泊まってあげることにしました。

ユースホステルの食事に豪勢な海の幸は期待しないものの、
昨夜の民宿の豪華な食事の後だけに、夕食はお粗末なものに感じました。
「ミーティング」と呼ばれるユースホステル独自の交友会もつまらないものでした。

※39年前の自転車旅行日記を忠実に再現したため、
このユースホステルが現在もあるとすれば、
当時の実情とは大きく異なっているに違いありません。

ギターが弾きたい気持ちは募るばかりでしたが、
今回の旅行では触るチャンスもまだありません。

夜10時に寝ました。
                                      つづく

【使ったお金】
松川浦民宿宿泊料 ¥500
氷いちご ¥20
氷レモン ¥30
コーラ2本 ¥70
パン ¥20
サイダー ¥30
アイス ¥10
ユースホステル 宿泊料 ¥480
合計 ¥1160
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by ymweb | 2009-03-25 15:58
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じゃずぎたりすと物語 42

自転車旅行3日目 〈松川浦の美〉
目覚まし通り6時に起きた。
旅館のご主人は 宿泊料金は700円と言っていたのに、
なんと500円にまけてくれた上、奥さんがお弁当まで包んでくれた。

「湯本」の5キロほど走ったところに 飲み物などを売っている 
売店兼食堂のような小さな店があった。
サイダーを1本買って、いただいたお弁当を広げました。
醤油の焼きおにぎりと酢漬け生姜、きゅうりの漬物とゆで卵も入っていました。
ゆで卵は5つも入っていたので、3つ食べて残りはお店のおばあさんにあげたら、
おばあさんはお茶を入れてくれて、おしんこをくれました。
とても嬉しく思いました。
さらに「とうもろこしも食べるかい?」と訊いてきましたが、
さすがにそこまでは甘えずに遠慮しました。

「平」を過ぎると車の量もすいぶん減ってきて、その点では良かったのですが、
国道6号は海沿いを走るわりには登り下りが激しくてとても疲れました。

「富岡」という町で信号待ちをしていたところ、食堂の2階から身を乗り出したおっさんが
「日本一周か??  休んで行け!」
そのおっさんは漫画に出てきそうな風体で、目がまん丸で毛むくじゃら。
熊が「へ」ーしたような雰囲気でした。

(呼び止めたのだからただで飲ませてもらえるかな??)
そう期待した私はその食堂に入りコーラを注文しました。

60円もとりやがって!!
夢ははかなく消えてゆきました。

しょぼんと肩を落として店を出るときに 熊のへーのおっさんが 
「しっかり行け!!」
ふざけんな。。。

自転車旅行はカロリーをかなり消費するので、
コーラのような甘い飲み物を体が要求するようです。
少し進んだ「大熊」というところで商店に入ってコーラの飲み直しをしました。
「熊」がからんでいるので少し心配でしたが、今回は35円。
なんだかほっとしました。

昨夜泊まった旅館のご主人はとても優しくていい人でしたが、
距離とかかる時間を把握していないというか、その点では大雑把な人だったようで、
目的地の相馬までは3時間で行けると言っていましたが、とんでもありません。
街から次の街まで遠いのなんの、体はバテバテです。
やはり自分の計算した距離や時間が正解で、かなりハードな行程でした。

原町の手前10キロほどのところに差し掛かったのは午後1時30分。
おなかが減ったっけどなかなか食堂が見つからず、
さらにしばらく走ってようやくパン屋を発見。
遅い昼食にありつくことが出来ました。

自転車旅行では「飯ごう炊さん」も考えましたが、かなりの荷物の増大に加えて、
食事の準備に要する時間を考慮に入れる必要がありました。
そのような訳で食事はすべて外食なのです。

ところで、私のように日本一周している人はいないとしても、
夏休みには大勢の人がサイクリングをしているようです。

南日本に行った時にも多くのサイクリストとすれ違い、
あるいは同じ方向に向かっていて、追い越したり、されたりします。
そんな中でもちろん気軽に声をかけて親しくなる場合もあります。
原町付近で知り合った大学生風の二人も同じ方向に向かうサイクリストでした。
私のこれまでの経験を彼らに伝えて、泊まれそうな寺を一緒に見つけようと提案しました。
相馬は「馬追い」で有名なのは、集めている切手によって知識として知っていました。
しかし入った2軒の寺に宿泊を断られ、意気をくじかれた彼ら二人は
「先に進む」と言って別れることになりました。
私は宿泊場所として、相馬の市街から東に進んで海に出た
県立公園に指定されている「松川浦」というところが気になりました。
さっそく行ってみることにしました。

松林に囲まれた、見るからに遠浅の海は浜になっていて、
並んでいる屋台では、ハマグリやホッキ貝を網焼きしています。
帆船など浮かんでいたらさぞかし風情が増し加わるに違いないな。
そんな穏やかでのどかなこの場所に泊まりたいと思いました。

海を眺めながらそんなことを考えていたら、
目の前の民宿から素敵なお嬢さんが出てきて門の外を掃除していました。
(ここっきゃないな。。。)
民宿は私にとって少し贅沢ですが、今夜の宿はここに決めました。
宿泊料金は800円にオマケしてくれるそうだ。

夕食の準備が整うまで、ご主人が船で松川浦の湾を一周してくれるそうだ。
私のほかにもう一人の女性泊り客を船に乗せて、
松川浦や灯台の歴史などを詳しく説明してくれました。
夕日が美しい。。。
カメラを部屋に置き忘れたのが悔やまれます。
すっかり松川浦を堪能して民宿に戻ると、良い匂いが立ちこめています。
ひゃ~~豪勢!!
お刺身の盛り合わせや蟹や海老。
本当に美味しく、おなか一杯になるまでご馳走になりました。
民宿は素晴らしい!

テレビで放送している「ザ・ガードマン」を見て、満足度100で寝ました。

【使ったお金】
植田の旅館の宿泊料¥500
サイダー ¥30
オレンジジュース ¥25
トマトジュース¥50
サイダー ¥30
アイス ¥10
パン2個 ¥40
コーラ ¥60
コーラ ¥35
アイス ¥20
合計 ¥800
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by ymweb | 2009-03-24 03:56
じゃずぎたりすと物語 41 〈ちょい悪少年!?東北へ〉

目が覚めると、朝6時30分だった。
いかんいかん。
予定では6時30分には出発のはずでした。

泊めていただいた神龍寺の住職に挨拶に行って、
恐る恐る「宿泊料はいくらですか?」と訊ねたところ、
「そんなものいらんから心配するな」とのこと。
しかも「朝ご飯も食べて行きなさい」と言ってくれました。
さすがにそこまでは甘えることが出来ず、お礼を言って出発しました。

今日も朝から真っ青な空が広がり、
昼はまた炎天下になるに違いありません。
昨日の熱射病のようなことがないように 帽子を深く被り、
美野里町で買ったパンを頬張りながらペダルを漕いで、
30分遅れた分を取り戻すべく 一生懸命走りました。

地図によると未完成の水戸バイパスでしたが、ほとんど完成していて、
道幅は広く平坦なため、自転車にとって走りやすい道路でした。

勝田の親戚の家に立ち寄ろうかどうしようか迷いました。
母が茨城県出身のため、勝田にも親戚がいて、
私のいとこがオープンして間もない旅館「再会荘」を経営していました。

通り道だし、おなかも空いたことだし。。。
せっかくですから寄って行くことにしました。

旅館「再会荘」に着くと、いとこの弘子と息子のやっちゃんがいました。
弘子は母の姉の娘で、私よりずいぶん年上です。
その弘子が、「おなか空いたっぺ?」と言って、寿司の出前を頼んでくれました。

もちろん寿司は当時でも高級で大好物ですが、う~ん、微妙です。
自転車旅行中のベストな食事は「高たんぱく高カロリー」が基本なのです。

「まったく貴昭は真剣に馬鹿なことばっかりやっから~」
「昔から変わんね~っぺ?」
届いた寿司を食べている最中に、少し予期していたフレーズが弘子から出されました。

これでは物足りない様子を感じ取ったのか
「おなか一杯っちゃあんめ、こっちも食べたらいかっぺ!?」
弘子はおもいっきり茨城弁です。

「もうすぐ照子おばちゃんも来っから~ ゆっくりしていったらいかっぺ? ほれ。」

「ほれ」と言われて1時まで待ちましたが 来ません。

出発しないと予定が狂ってしまうので、
お礼を言ってこのクーラーの効いた涼しい環境を後にし、
また炎天下の道路に戻り、一路北へと進みました。

また予定を30分遅れてしまいましたので、ペダルを漕ぐ足にさらに力を込めました。
今日はなんとしても福島県境までたどり着くというのが目標です。

右手に見える太平洋の美しい大海原も、体力的「きつさ」が圧倒して、
「目的地に着く」ことしか頭に浮かびませんでした。

日立を過ぎて高萩に着くころ、追い越していくバスの窓から
「頑張れ~~!!」と学生が私に声援を送ってくれました。

青空がだんだん夕陽色に変わり、少し薄暗くなり始めたころ、
国道6号は少しの登り坂に差し掛かりました。

「勿来の関」 ・・・・・ 「福島県」
やった!!!!! 福島県まで来た!!

そうです、福島県は立派な「東北地方」です。
自転車で東北地方まで走破することが出来ました。

外の景色はだんだん暗くなってきました。
辺りが暗くなると、宿を探すのに一苦労します。

「鮫川」という川を越えて間もなく、近くにいたおじさんに声をかけて事情を話し、
この辺で泊めてくれそうなお寺があるかどうか尋ねました。

紹介されたお寺に行って宿泊を頼んでみたものの、あっさり断られ、
来た道を戻ったら、さっきのおじさんが立っていて、「断られたか? んじゃうち泊まるか?」
立っている目の前がその旅館でした。

小さな白い看板には「仕出し・旅館」と書かれていました。
「心配ないよ、安くしておくから」 とのことでした。
とはいえ値段が気になったので率直に聞くと、
素泊まり700円でいいそうです。
お寺の「タダ」の比べれば高い宿泊料でしたけど、
とても親切で優しそうなご主人だったので安心できました。
どうやら宿泊客は私一人のようです。

ご主人に「有名な常磐ハワイアンセンターって どんなところですか?」と尋ねると、
「どこにあるのか?」と聞き間違えたらしく、地図を広げて丁寧に説明してくれました。
しかし、地図でなかなかその場所が見つからずに、少ししらけました。

部屋で少しくつろいだところで、おなかが空いたので外に出て夕食をとりました。
今にもつぶれそうな店に入って、「焼きそば定食」を注文しました。
高カロリーでおなかは一杯になりました。

ところで、16歳の宮之上少年は、少しだけ大人の仲間入りに憧れて?
悪いことも目論んでいました。

「タバコ」

当時は自動販売機などほとんど設置されていませんから、
タバコ屋で直接買うしか手に入れる方法はありませんでした。

今でさえ「童顔」、当時はそのまんま童顔の宮之上少年。
暗くなった時間が唯一タバコをゲットするチャンスでした。

帽子を深く被ってケースの真ん中辺りにあるタバコを指差し、
目一杯頑張った低い声で 「これください」

店のおばちゃんはそんな私を少し疑うような目で見て、
「はい、ホープね、50円」と言って差し出しました。

50円を手渡すと、「上半身はそのまま、足は小走り」で
その場をささっと立ち去りました。

部屋に戻って早速試してみることにしました。生まれて初めての タ・バ・コ

ゴホッゴホッ!! オエッ!! 
なんぢゃこれ?? ま、不味い。。。

初タバコの感想でした。
※これを機に「ン十年」と喫煙していましたが、ずいぶん前に卒煙しています。

[使ったお金]
パン3個 ¥60 
牛乳1本 ¥30
サイダー2本 ¥80
リンゴソーダ1本 ¥35
アイス1本 ¥10
まんが1冊 ¥100
夕食 ¥180
タバコ(ホープ)1個 ¥50
【合計 ¥545】

                                              つづく
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by ymweb | 2009-03-05 20:12 | じゃずぎたりすと物語