宮之上貴昭執筆による長期連載


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17〈自転車日本一周旅行計画〉

間もなく夏休み。

学校から帰ってすぐに「自転車日本一周の旅」の準備を黙々としていると、

母が「貴昭、お前夏休みに本当に自転車で行くつもりなの?
お父さんが『危ない』って心配してるよ。」

無視していると、
「まあ、この子は昔から一度決めたことは必ず実行する子だからね。。。」

さすがに母だ。
私の性格を見事に見抜いている。
そう、一度決めたことは誰が何と言っても実行するのです。


高校の夏休みは40日しかありません。
寝る所は「テント」の覚悟ですが、テントのほかに自炊用品が加わるなら、
想像を絶する荷物の量となるので、さすがに食事は外食と決めました。
総予算はというと、すごく自信に満ちて1万5千円です。

そもそも日本一周の距離はどのくらいあるのだろうか?
早速、全日本道路地図を購入して調べてみることにしました。

荷物が多くて重いので、時速15~20キロで1日7時間走れたとして、
走行距離は130キロくらいか。
いや待てよ、晴天の日ばかりとは限らないし、台風も来るかも。。。
では少なく見積もって平均して120キロだとしたら。。。

ゲッ! 日本半周も出来ない!!

やはり高校生の考えです。
まあ何とかなるだろうという、夢と期待に燃えた大雑把な計画は、
それが現実的、具体的な数字になると挫折感を味わいます。

そうです、物理的に言って40日の夏休みに自転車で日本縦断ならともかく、
日本一周することは不可能なのです。

しかし私はあきらめませんでした。
仕方ない。。。
それでは半周ずつ2ヵ年計画で回るのはどうだろうか?
このアイディアがひらめきました。
そうです、この夏休みに東京から南日本を一周して、
来年の夏休みに北日本を一周するということです。

これだと日本の外縁をほとんどくまなく回ることが出来そうです。

計画は以下の通りでした。
東京を出発して東海道をひたすら走り、京都から山陰を通って島根に抜けて、
山口から九州に入り、九州を一周してからフェリーで四国に渡ります。
※当時はまだ沖縄が日本に返還されていませんでした。
徳島から本州の和歌山に渡り、和歌山から京都まで戻ったら、ここで来た道と交差。
琵琶湖の東側を通って北陸へ抜けて、富山から岐阜県高山に抜け、
北アルプス越えをして松本に出て、そこから甲州街道を東京まで帰るコースです。
我ながら完璧なコースです!

心と体の準備もしっかり整えて、夏休み突入と同時に出発です。

そんな2学期の終業式を4日後に控えた夕方でした。
いつも通りに学校から帰ると、珍しく父が早く家に帰って来ています。
さらにどういうわけか、その父と仲の悪いはずの兄も家にいます。

「ど、どうしたの??」



「お母さんが!お母さんが倒れたんだよ!」

つづく
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by ymweb | 2007-07-25 05:03 | じゃずぎたりすと物語

16 〈大きな進歩〉

初めてのジャズギターを手にして、相変わらずレコードを聴いては片っ端からコピーする毎日。
フレーズやコードもレコードに合わせれば同じように弾けるようになったものの、
一体どこでこのフレーズを使うことが出来るのかよく解かりませんでした。
コピーしたその曲でなければ適用できないのです。
それで、大筋でコード進行の解かる〈ブルース〉のソロを中心に勉強することにしました。
この練習方法はどうやら大正解だったようです。
同じキーのブルースをコピーしていくうちに、
コードに基づく特定のスケールの法則を発見することが出来ました。

考えてみれば私は兄の影響で古賀正男から入りました。
演歌は曲の構成のそのほとんどが分散和音です。
「そうか、このコードの時にこの音が使えるのか!」
そんな私がコードに基づくフレーズを理解することは比較的簡単でした。
ギターの演奏に固執することなく、ブルースの入っているレコードを選んでは
自分の好みのフレーズだけをピックアップしてコピーして弾けるようにしました。

そんなある日、また一つ大きな発見をしました。
スタンダード呼ばれているたいていの曲はその終わりの部分で
ブルースで使ったのと同じようなフレーズが使われていることに気が付いたのです。
それは後に解かったことですが、ジャズのフレーズの基となる、
いわゆるⅡ・Ⅴ・Ⅰのコード進行だったのです。

このことを理解したということは、それまでひたすらコピーしてきたフレーズは
単なるジャズのムード向上や指の運動に終わった訳ではありません。
そうです、コピーしたフレーズのほとんどを有効に活用できるのです。

たちまち多くのフレーズをブルースに当てはめて弾くことが出来て、
しかも〈枯葉〉などのスタンダード曲にも適用出来るまでになりました。
これは大きな進歩です。

たいていの幼い子がそうであるのと同様に、1歳まではほとんど会話が出来ませんが、
2歳になったとたんに堰を切ったようにいろいろな単語を並べて話をし始めます。
それまで表現できなかった文法や単語を心の中で蓄積させ、
ある時期に表現の方法が見つかると突然話し始めるのです。

私の場合もそれと似ているような気がします。

ただ単にフレーズを当てはめて弾くという練習方法を行っているうちに、
同じコード進行内ではフレーズ同士を途中からスイッチして演奏することや、
休符を入れて、残りを16分音符にして弾くことが出来ることにも気付きました。
これは素晴らしい進歩です。

とはいえ、それまで蓄積してきたコピーしたフレーズの量が極めて多いので、
この練習には終わりが無く、考えれば考えるほど気が遠くなる作業でした。
実際のところ私の頭の中は四六時中ジャズのことで一杯でパンクしそうでした。



季節は梅雨になりました。
梅雨が明けると高校生活初めての夏休みがやって来ようとしています。
学業ではなく、ギター生活にかなり疲れていました。
はっきり言って弾き過ぎです。
それで、この夏休みの期間はギターから少し離れて充電期間を設けようと考えました。
部屋に引きこもってギターだけに焦点を合わせた生活から離れることは、
後になって自分のための良い音楽につながると思いました。

そうです、音楽とは無縁の状況に身を置くことを決意しました。
それは精神的にも肉体的にも鍛えられる方法です。
その方法とは誰もが「あまりにも無謀」と口を揃えるものでした。

自転車で日本一周を計画したのです。

                                       つづく
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by ymweb | 2007-07-12 21:19 | じゃずぎたりすと物語