宮之上貴昭執筆による長期連載


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2010年 01月 13日 ( 1 )

〈じゃずぎたりすと物語〉

【これまでのあらすじ】
※長い間執筆を中断していたので、
  読者の皆さんに途中からでも分かるように、
  とても大雑把ではありますが、
  ここにこれまでのあらすじを記します。

10歳の時に兄からもらったギターを初めて手にした宮之上少年は、
その後練習を積んで中学の音楽会に参加し、独自にアレンジした
〈ウィリアムテル序曲〉で学校中で大好評を得る。

15歳の時に初めて聴いたジャズのレコードで目覚め、
毎日10時間の練習をこなし、ジャズギターの道まっしぐら。

そんな中、兼ねてから趣味だったサイクリングが加熱し、
ジャズのためにも精神と根性、肉体を鍛えるべく目標に置いたのは
「自転車による単独日本一周旅行」。

しかし高校の夏休みは40日しかないので、
一気に日本一周するのは物理的に不可能。
そこで一年の夏休みに南日本を一周し、
二年の夏休みに残りの北日本を一周、
そうして半分ずつ回ることに決めた。

とはいえほんの少年にすぎない宮之上が旅で遭遇するのは、
初めて訪れる美しい景色や接する人々の優しさ、
嬉しい楽しいことだけではなく、始終危険と隣り合わせ、
時には命の危機にもさらされるハプニングもあって、
まさにハラハラドキドキワクワクの連続です。

現在16歳の宮之上少年は日本一周旅行・北バージョンの7日目、
岩手県の盛岡を過ぎて、
途中で知り合った日当君という同じサイクリストと共に、
沼宮内のお寺に泊まりました。

〈じゃずぎたりすと物語 46 さらば友よ〉

ギターの中は暖かいと思ったら、F字ホールがあるので隙間風が吹いて寒い。

コケコッコ~ッ!
うう、さ、寒い。。。

変な夢と、けたたましく鳴くニワトリの声、
そして寒さと喉の渇きのために起き上がったら5時半。
昨日知り合った日当(ひなた)君はまだ熟睡ムードだ。

私は出発の荷を整えて、6時になったところで彼を起こしました。
記念に一緒に写真を撮って、彼の支度も手伝うと、
出発は7時頃になりました。

国道4号を彼の自転車と連なって走りました。
後ろを走る彼の自転車には鍵に鈴が付いていて、
道にでこぼこがあると、時たまチリ~ンと涼しげな音がします。
この音が聞こえるので、後ろをいちいち振り返らなくても
彼との距離感を把握することが出来ます。

朝食は小鳥谷(こずや)というところにあった商店に入って、
パンと牛乳を買ってベンチに腰掛け、二人揃って食べました。

自転車旅行の難関は「峠」と書かれた地図上の文字です。
これから「十三本木峠」と地図に書かれた場所を通過します。
しかしこれまで日本の屋根「北アルプス」をはじめ、
幾多の峠を超えてきた私。
これくらいの「等高線」は何てことないはずです。

えっさえっさ、ほいさ、チリ~ン ほいさ。。。 チリリ~ン
日当君の自転車の鈴の音も頻繁に鳴っています。

地図で調べてみると、
この十三本木峠は二段階に分かれているようで、
峠を二つ越す必要がありました。
ちんたら続く上り坂の連続は、
宮崎県にあった「宗太郎峠」を思い出しました。
※ 25話〈四国上陸〉を参照ください。
http://ymweb.exblog.jp/m2007-11-01/

しかし下り坂では自転車旅行の醍醐味である、
素晴らしいダウンヒルを楽しむことが出来ました。
後ろに続く日当君の鈴の音も軽やかに鳴り続けています。

気持ちの良い下り坂も終わり、流していた汗も乾いたころ、
金田一村に入る少し手前の商店に入って、私はファンタ、
彼はパインジュースを注文して、ここで少し休憩することにしました。
というのも、昨日から一緒だった彼とのお別れが近いからです。

ウニやアワビの豪快な食べ方や水産高校のことなど、
興味深い話を熱く語ってくれた日当正人君。
君とは心から打ち解けて親しくなることが出来ました。

国道395号線との分かれ道、右「久慈」と書かれてある交差点。
いつかまた会おうと約束してここでお別れです。
お互いに大きく手を振ってそれぞれの道を進みます。

私はそのまま国道4号を進みますが、
さっきまでの鈴の音はもう聴こえません。
とても寂しくなりました。

※あれから時を隔てた現在。
彼はどこで何をしているのでしょうか。
元気なのでしょうか。。。

愛車レッド号は岩手と青森の県境の峠に差し掛かりました。
環境はたいていが峠になっているので、
別の県に入る喜びは自転車にとって苦しみでもあるのです。
やはりこの県境の峠もきつかった。。。

走行距離は少し短いけれど、そろそろ宿の準備が必要です。

右「八戸」と書かれてある標識のあるところまで来ると、
田んぼの仕事で一休みしているおばさんがいたので、
「この辺に泊まれそうな場所はありますか?」と訊ねると、
「お宮が近くにある」とのこと。
早速そのお宮に向かってみたが、こりゃまずい。
気持ち悪い場所にあって、いかにも「出そう」だ。
ここにテント張るのは絶対に嫌だったので、
仕方なく上り下りの国道をさらに北上して、
三戸郡扇田というところまで来ました。

近くの民家に「この辺にテント張れるような場所があるか」と訊ねると、
「そこに大きな家があるから行って頼んでみなさい」とのこと。
中川原さんという家の庭にテントを張らせていただくことになりました。

中川原さんの奥さんは気さくで優しい感じ。
家の子供たちも出て来て、私のテント張りを手伝ってくれました。
私のことが珍しいのか、小さな子供たちも大勢やって来て、
すぐに打ち解け、一緒に庭で野球をしました。

何やら木の実を取ってきて「食べて」と言って近づいてきます。
「すぐり」と呼ばれる実で、甘酸っぱくて爽やかな美味しさでした。
(後に調べると、ユキノシタ科の落葉性の小木の実だそうです。)
さらに「ハタンキョウ」という実を持ってきて食べさせてくれた。
知らない名前の果実でしたが、これはほとんどプラムでした。
(後に調べると桃の近縁でトガリスモモと言うそうです。)

テントを張った庭のすぐ先には清水も湧いていて、
どうやら素晴らしいところに今夜の宿を設営したらしい。

さて明日は東京を出発して8日目。
いよいよ北海道に入ることが出来そうだ。

しかし順調ならば、だが、明日からまたとんでもない人に出会い、
そして北海道上陸の日に最悪な一夜を過ごすことになろうとは。。。

                                  つづく
【遣ったお金】
パン3個 牛乳1本 \105
ファンタ2本 \60 アイスクリーム \40
合計 \205
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by ymweb | 2010-01-13 05:56 | じゃずぎたりすと物語