宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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2008年 01月 13日 ( 1 )

ユースホステル

じゃずぎたりすと物語 27 ユースホステルe0095891_1401818.jpg

松山城を後に、美しい瀬戸内の海岸沿いに北に向けて走っていると、
突然くらくらとめまいがして頭が割れそうに痛くなってきました。
気分も悪く、吐き気ももよおしました。

十分な水分も取らずに炎天下を走り続けたので、
どうやら熱中症と脱水症状を起こしたようです。

ふらふらして、とても走れる状態ではありません。
国道から少しそれて、日陰の涼しいところに身を置いて
草むらに横になりました。

いくらか楽になったところで、向こうに見える民家に行き、
水をいただくことにしました。
一昨日の宗太郎峠のトラウマがあって、水をもらうのは慎重です。

「こんにちは~」

「は~い」
出てきたのは背中に赤ちゃんをおんぶした30歳くらいの女性でした。
赤ちゃんは寝ているようです。

「お水ね、はいはい」
事情を話すと奥の台所からコップに水を入れて持ってきてくれました。

「すみません、おかわりをお願いします」
そう言って3回、つまり台所まで3回往復させてしまいました。
でも本当はまだまだぜんぜん飲み足りなかったのですが。

「さっきより顔色が良くなったかしら?!」
体調が悪かったことを察知していたようです。

「あっ、でもお陰さまでずいぶん気分が良くなりました。」

命の水でしょうか、頭痛はまだするけれど、
ほんとうに気分は楽になってきました。

水筒にも満杯に水を入れてもらって、お礼を述べてまた出発。

いくらかふらふらして走行しながら、愛車レッド号は
伊予・北条という街に入ってきました。

時間的にも少し早いのですが体調のことを考えて、
今夜はこの街にあるユースホステルに泊まろうと思います
実はこんなこともあろうかと、
旅に出る前にユースホステルの会員になっていました。

1泊2食付で700円。

一般の人にとっては格安なこの宿泊施設も、
15歳の高校生が自転車旅行で使うには予算オーバーなのでした。
だいいち、野宿すれば宿泊費はタダなのですから。

とはいえ、事情が事情なので仕方ありません。

それは海に程近いところにあり、ほとんど旅館のようでした。

予約をしない「飛び込み」でしたが、空いている部屋があって、
宿泊が可能となりました。

体調が悪いことを伝えると、部屋で休むように言われて、
畳の上で小一時間仮眠を取りました。

夕食の準備でしょうか、いい匂いに目を覚ましました。
体調もずいぶん良くなったので、
外に出て回りを散歩することにしました。

すぐそこは海岸です。
堤防には蛸壺がずらりと並んでいる珍しい光景を目にしました。
目の前に浮かぶ鹿島という小さな島。
そして視線を遠くに向ければ瀬戸内の大小さまざまな島が浮かんでいます。
お父さんやお母さんは元気かな。。。
これから先、事故が無く元気で旅が出来るのかな。。。
夕日が海に沈むまで佇み、さまざまな思いにふけりました。


さて、おなかが空きました。

宿に戻ると他の宿泊客が大勢到着していました。

夕食はそれぞれ指定されたテーブルに着いて食べます。
私は「蛸飯」なんて期待していたのですが、
残念ながら蛸は酢の物だけで、ごく普通の旅館の夕食。
特別な瀬戸内の献立はありませんでした。
しかしご飯はお櫃にたくさん入っていて、好きなだけ食べられます。
うわ~ぃ!

大盛り6杯食べてようやくおなかが一杯になりました。

現在でも行っているのでしょうか。
ユースホステルの独特のシステムとして、
夕食後にオーナーがホストを努めて、宿泊者がみんな揃って自己紹介したり、
歌を歌ったりしてミニ・パーティを行うことになっています。

ほとんどが大学生以上なので、私は照れくさいので出るのをやめようと思いましたが、
同室になった社会人グループの人の誘いを断れなくて参加することにしました。

「こちらミヤノウエ君といって高校1年生、自転車で日本1週してるんだって」
自己紹介しないうちに同室の人がみんなに紹介。

「きゃ~素敵!」  「可愛~い!」

20歳過ぎたオバちゃん?から黄色い歓声。

(だから出るの嫌だったんだ。。。)


宿泊客15人全員の自己紹介や、
つまらない旅の話にいささか辟易していると、
宿泊客の大学生っぽい男が部屋に戻ってギターを持ってきた。

(あっ。。。ギター)

「こいつギター上手いんですよ~~」とその仲間。
その途端に彼はギターを弾き始めた。

今流行っているポップスやフォーク調の曲を意げに弾いては
女性客の方をちらちら見て気を引いている。

(ギターに触りたい)

そんな気持ちを察したのかしないのか、
「ギター弾ける?」と大学生が私に振ってきた。

「ええ、まあ。」

「弾いていいよ」

(本当に弾いちゃっていいんだな!?  いいんだな!?)
 
                               つづく
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by ymweb | 2008-01-13 01:42 | じゃずぎたりすと物語