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宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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後悔

じゃずぎたりすと物語 29 〈後悔〉

昨日の寝不足がたたってか、
いつもなら7時頃には自然に目覚めるのだけど、
何と目が覚めたのは10時過ぎでした。
テントの中は日の出と共に明るくなり、
そして温度も上がってくるのだけど、
この日ばかりはそんな状況などお構いなしで爆睡しました。

あわててテントをたたんでいざ出発!
しかし明らかに寝坊で、このことが後に大きな後悔へとつながっていきます。

今日は四国を離れて本州に上陸です。

徳島からフェリーに乗っていきなり和歌山に移動するコースもありますが、
せっかくですから「鳴門のうず潮」を見て淡路島に渡り、
淡路島の途中から大阪湾の泉南に渡るコースを選びました。

高松の街を過ぎた頃、国道の両脇のいたるところに
「うどん屋」の看板が目に付きます。
そんな中、とりわけ雰囲気だけで「ここは絶対美味しい!」と
思えるような店を見つけました。

その店は名前らしきものがなく、
ただ「元祖讃岐うどん」と書いてあります。

駐車場だけは異常に広いけど、
飾り気のないごく普通の民家のような店構えで、
入り口のところに、営業時間は午前11時30分開店、とあります。

時計の針は今午前10時45分ですから、
食べるためにはあと45分も待たなければなりません。

うわっ、どうしようかな。。。
驚いたことに閉店時間を見ると、何と午後3時と書いてあります。
な、何と殿様商売の店なんだ!
これは美味しいに決まってる!

しかし今朝は寝坊したし、少し先を急ぐ必要がありました。
(ここは仕方なく諦めてもう少し進んで他の店でうどんを食べよう)
そう思い直してレッド号にまたがった時、
1台、2台と国道からこの店の駐車場に車が入って来て、
車を降りた人たちが開店前のこの店に並ぶではありませんか。

うわっ、勘は的中した!
やはり相当有名で美味しい店に違いありません。
これはもう待つしかないでしょ。

そして45分後、店のシャッターがおもむろに開けられ、
流れ込むように待っていた客は店の中に入っていきました。

いつの間にか私の後ろで開店を待っていた客は
10人になっていました。

あれ~~??どうするんだ??
店のシステムが解らず、戸惑っている間に
後ろの客が私を追い越していました。

どうやらほとんどセルフサービスらしく、
棚に並べてある天ぷらや玉子などを勝手に取って、
店主が暖めるうどんの上に載せています。
ほとんどの客はうどんの器に乗せきれないほど盛っています。
私は予算がないのでうどんを大盛りにして、
トッピングは野菜の天ぷらだけにとどめました。

美味しい!!
生まれて初めて食べる本場の讃岐うどん。
つゆは限りなく透明に近いけど塩気は十分で、
昆布のつゆが利いています。
しかし素晴らしいのは麺にありました。
かつてこんなに噛み心地のあるうどんは食べたことがありません。

満足のいく250円でしたが、壁に張られてある文句をみてガクッ。

「天ぷらや玉子はサービスですから自由にお取りください」

なるほどみんなが並んでまで待つ甲斐のある店でした。
しかしこの時間の使い方も、後ほど大きな後悔へとつながります。


さて思わぬところで「うどん」も「時間」も食ってしまいました。
徳島県鳴門市に向かって再び出発。

平坦で走りやすいと思えた国道11号線でしたが、
交通量の多さに加えてピーカンの天気。
体力の消耗も激しく、
走行は考えていたより簡単ではありませんでした。
高松から鳴門までたった60キロを3時間もかかってしまいました。

ようやく鳴門市に入って、淡路島に渡る「淡路フェリー」乗り場に向かいます。
道路の両脇の看板には「鳴門昆布」の直売店が並んでいます。
かなりのんびりペースで走ったために、ずいぶん陽も傾いていました。

淡路島は目の前に浮かんでいて、距離が近いので、
きっとフェリーの本数も多いものとたかをくくっていましたが、
私が到着するとフェリーは出航したばかりで、
次の便は1時間後の夕方4時でした。

ようやくフェリーが到着して、車の乗船に次いで乗り込みました。
さて楽しみにしていた「鳴門のうず潮」を見ることが出来るでしょうか。
私の大好きな時代劇俳優、近衛十四郎が出演して鶴田浩二をびびらせたという
「鳴門秘帖」の舞台ですから。

「うず潮」見物のために甲板に出て、それらしき海を一心に見つめました。。。

が、見当たりません。

目を凝らして海原を見つめるも、見当たりません。

どうやらうず潮はフェリーの航路よりかなり東側で発生するようでした。
なるほど乗船客の誰も甲板に出る人がいないわけです。

ん~~ 残念!! 
これも徳島藩主・蜂須賀重喜の仕業か?
などと他愛もない思いを胸に四国を後にし、
向かうは眼前に浮かぶ淡路島。
待ち時間が長かった割にはあっという間の20分で到着しました。

自転車は車より先に下船の合図。
ヒューっと軽快に舗装された道路を走ります。
淡路島は広くて島という感じがまったくしません。

およそ1時間走り、島を3分の2くらい北に縦断して津名という町に到着。
ここからフェリーで大阪の泉南というところまでまたフェリーを乗り継ぎます。

陽は落ちはじめ、時計の針は5時30分を指しています。

フェリー乗り場に到着すると、またまた船は出港したばかりでした。
次の便の時間を確認すると。。。 なんと19時30分とあります。

この2時間の間にテントを張れそうな民家を探すことを思いつきました。
何軒かあたってみましたが、島のせいか、それほど広い庭もなく、
すべて断られてしまいました。
「淡路島観光協会」というところで安い宿を紹介してもらいましたが、
そのどれも私にとって「ケタ」が一桁違いました。

この時になって朝寝坊をしたことと、
うどんに時間をかけすぎたことを大いに悔やみました。

どうしようか。。。
大阪に渡ってから探そうか。。。

フェリーの桟橋で釣りをしている人を横目で見ながら考えていました。
そうこうしている間に遠くから私の乗るフェリーが夕闇の中から近づいてきました。

早速乗船しました。
先ほどのフェリーより一回り大きな船体でした。

およそ1時間20分で大阪の泉南に到着するそうです。
ということは、下船するのは夜9時頃ということになります。

船室で地図を広げて黙想します。
この夜にどこまで走らなければいけないのか。。。
どこか泊まれる場所はあるのだろうか、

まったくあてのない旅に、15歳の宮之上少年はとても心細くて心配になり、
あらためて旅の怖さを実感しました。
昨日の夜、大学生にギター対決したあのツッパリの気持ちは
もはやこの時点ではありません。

「本日も大阪湾フェリーをご利用いただき、まことにありがとうございます。
間もなくこのフェリーは大阪・泉南港に着岸いたします」

船室でのくつろぎはここまで。
そんな少年の心などお構いなしにフェリーは到着して、
下船を余儀なくされました。

あっ!

さらに無情の雨が私に追い討ちをかけました。

出発したときは良い天気だったのに。。。

ポンチョを取り出して着て、仕方なく雨の夜道を走り出しました。

フェリーが着いた泉南は、大阪府とはいっても最南端に位置していて、
すぐ隣は和歌山です。
国道26号線は幹線道路のため交通量が非常に多く、
しかも夜に自転車で走るにはかなりの危険を伴いました。

雨のために視界が悪く、濡れたポンチョのために
思うようにハンドルが捌けません。
加えて、ライト点灯のためのダイナモが負荷をさらに増し加えます。
ううっ、寒い。。。

(もう少し早起きしておけば。。。)
(うどん屋は他にもあったではないか。。。)

さまざまな後悔が頭をよぎり、顔は雨粒と涙で溢れていました。


進む先に大きな水溜りがあったので、
少し道路の右に出てそれを避けようとした時です。

後方から大型トラックらしい車が来ていることは知っていました。
でも、道路は広いのでこれくらいはみ出ても大丈夫だろうと思い、
ハンドルを右に切った瞬間、

ギィ~~~~~~~~!!!!

                           つづく
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写真:淡路フェリー
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by ymweb | 2008-02-05 00:34 | じゃずぎたりすと物語