宮之上貴昭執筆による長期連載


by ymweb
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〈四国上陸〉

25話 〈四国上陸〉

翌朝、ワンゲルの二人にお別れを告げて宿泊した寺を後にしました。
すぐそこの角を左に曲がれば、素敵な娘のいた「みなみ食堂」ではあったが、
男の変なプライドが邪魔をして、そこはあえて曲がらず国道10号線に出て、
心を今日の目的地である四国に向けて北上しました。

感動したことがあると、人間は音楽と結びつけるのでしょうか?
少なくとも私の場合はそのようで、ペダルを踏む足がリズムを刻みました。
昨夜会った美しい人のイメージで、リズムはボサノバです。
ギターは無くても頭の中で曲が完成しちゃいました。

涼しい瞳と長い髪、海に程近い街でお会いしたお嬢さんには
ボサノバの雰囲気は良く似合うかもしれません。
〈イパネマの娘〉ならぬ〈延岡の娘〉?
ちょっとこのタイトルはいかさないから後で考えることにします。
メロディを忘れないように紙に書いておいて、
帰ったら早速ギターで奏でてみることにします。

40分ほど走るとペダルを踏む足に力が入らなくなりました。
甘酸っぱい思い出のせいでなく、物理的にちんたらとつづく山道のせいです。
急坂がずっとつづくわけではないので、車で走るとどうってことない道路も、
自転車の場合は訳が違います。
降りて押して歩くほどではないのですが、ペダルを踏むには相当な労力が必要です。
この自転車にとって厄介な峠は「宗太郎峠」という名前が付いていました。

終わりのない山道にくたくたになって、喉もカラカラに渇きました。
残念なことに、レッド号に備え付けの水筒に水を入れてくるのを忘れていたのです。

その時です、民家の石垣の脇に蛇口を発見!!
思わずレッド号を横に停めて水をいただくことにしました。

蛇口をひねったその時、
「ちょっと!あんた!何してんの!!」
奥からおばちゃんが出てきて私に向かって怒鳴りました。

「あっ、勝手にすみません、喉が渇いていたので。。。」
こちらの言い訳を話し終わらないうちに
「この辺は水不足なんだから勝手に使わないでちょうだい!」

ひぇ~~恐い!!
「すみませんでした。。。」

ここは言い訳せずにそそくさと退散しました。
「宗太郎峠」の名は、今でも私の記憶に「嫌な思い出」としてはっきりと残っています。


道が少し平坦になって走りやすくなると、大きな橋が見えました。
国道10号とお別れしてこの番匠大橋を渡り、佐伯市から臼杵に向かいます。
いかにも魚の美味しそうな豊予海峡の美しい海沿いを走り、
今では高校野球ですっかり有名になった津久見の街を過ぎて、
ほどなくしてフェリーの出る臼杵港に到着。
乗るのは九州側の臼杵と四国の八幡浜を結ぶ「九四フェリー」
フェリーの出発時間を前もって調べておいたので、到着後待ち時間もそれほどなく、
スムーズに乗船することが出来ました。

いよいよ生まれて初めて行く四国に渡ります。
車両デッキの乗用車や大型トラックに囲まれて、端っこにぽつんとレッド号が1台。
さすがに自転車で乗船するのは私一人でした。
およそ2時間半の船旅です。

これまでの自転車旅行計画を振り返ってみると、
おおむね予定通りに順調に来ているようです。

時間にゆとりがあればせっかくの四国ですから、南のほうまで足を伸ばして
足摺岬や室戸岬などの景観を楽しみたいところでしたが、
40日という限られた高校の夏休みなので、それらを見て回ることは難しいことでした。
それで私はやむなく四国北部だけを通過するコースを選択していました。

甲板に出て真っ青な空と大海原を眺めていました。
進行方向左手には佐田岬がずっと見えています。
地図で見ると東西に長く突き出た岬です。

四国ではどんな出会いや感動が待っているのだろう。
船内の客室で地図とにらめっこして今日の予定を立てて、
いろいろと思いを巡らしていました。

船内のアナウンスが流れて下船の準備です。
船は愛媛県八幡浜港に着きました。

自転車なので車両より早く下船することが出来ました。
フェリー桟橋の片隅では揚げたての「じゃこ天」を売っていました。
ついつい良い匂いに誘われて2枚ほど買い込み、
それをほおばりながら、四国第一歩のペダルを踏み出しました。

                                      
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つづく
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by ymweb | 2007-11-30 15:51 | じゃずぎたりすと物語